2018年10月21日

第48回勉強会

9月25日に開催された勉強会の内容です。



自己紹介は松林えみさんです。

自然栽培や農業を知りたくて参加してくれました。

みどりの里にも来て一緒にイチゴも植えました。

また皆さんからも勉強させていただきたいとのことでした。


今回は名城大学の礒井先生からスタートです。


(ウィリアム・ダビン 土壌学入門 古今書院 2009)

根からの養分吸収です。

直接根が養分のあるところに根を張る吸収します。

マスフローという水の流れに養分がのって根へ供給されたり

根が養分を吸収したところが濃度が薄くなってまわりからまた養分が移動してくる

拡散という養分の移動の仕方があります。



これらのみでは移動しにくいリン酸などは欠乏しやすくなります。


(豊田剛己 編 土壌微生物学 朝倉書店 2018)

根の周りは古くなった根の脱落細胞や根からの分泌物が供給されることで

根圏という周りの土とは違う微生物環境ができます。

こういった微生物との共生関係からリン酸のような移動しにくい養分を吸収するパターンもあります。

鉄(Fe)もまた吸収しにくくなる性質を持っていて

酸化し土壌にFeはあるのに根は吸収できなくなります。

酸化した鉄はさびです。


(山﨑耕宇ら 植物栄養・肥料学 朝倉書店 1993)


http://www.rib.okayama-u.ac.jp/plant.stress/Fe-Ma.html

植物は土壌中の難溶性のFeを吸収する仕組みをそれぞれのやり方で持っています。

根からの分泌物にムギネ酸があり

難溶化しているFe(Ⅲ)をそのままの形でムギネ酸が包みこんで

ムギネ酸ごと根が吸収します。


(米山忠克ら 新植物栄養・肥料学 朝倉書店 2010)

左の図は双子葉類が鉄獲得のために

難溶化しているFe(Ⅲ)を細胞膜にある三価鉄還元酵素(R)によって

吸収できる二価鉄Fe(Ⅱ)に還元して吸収する方法です。

右の図はイネ科植物のみが持つムギネ酸による

難溶性のFe(Ⅲ)をムギネ酸で包み込んでムギネ酸ごと吸収する方法です。


(和田・泉 土肥誌86,214,2015)

リン酸も他のものと結合して難溶性のリンになっているので

根から有機酸や酵素を出してリン酸を取り外して吸収しています。


(山﨑耕宇ら 植物栄養・肥料学 朝倉書店)

黒が施肥してあり、白が無施肥です。

そのときの根からの分泌物の量のグラフです。

無施肥だとリン酸を得るために根からの分泌物がかなり増えています。

後はリン酸を得るために根が共生関係を結ぶ菌根菌の様子です。


(D.M. Sylvia et al. : Principles and Applications of Soil Microbiology. Prentice Hall , 1999)


(梅谷献二・加藤肇 農業有用微生物 養賢堂 1990) 


(新版分子レベルからみた植物の対病性 2004)




(森崇ら 中部土壌肥料学研究 105、 46-47、 2016)

人の手が入らないほどこういった共生関係を結ぶ菌の感染率が上がります。

不耕起、無除草、無施肥状態が一番高いです。

播種2016.6.6.1.




播種2018.5.25.




まだまだ試験は続けています。

大豆が6年かけて続けたところがよくなりつつあります。

今回はもう一つ連作障害についてもやっていただきました。


(農学大事典 養賢堂 1991)


(農学大事典 養賢堂 1991)

連作障害で落ち続けるかと思いきや

意外と回復しています。

残念ながらインゲン豆はひたすら落ちています。

インゲン豆はみどりの里では連作してもしなくてもあまり変わらないです。


(農学大事典 養賢堂 1991)


(木嶋利男 連作のすすめ 家の光協会 2012)


(木嶋利男 連作のすすめ 家の光協会 2012)


(小林紀彦 土壌病害と発病抑止土壌 化学と生物 22 1984)


(小林紀彦 土壌病害と発病抑止土壌 化学と生物 22 1984)



夏の暑さが激しすぎるのか

自然栽培でも病気が出てそれが次の年に持ち越すことがありました。

エンドウは連作障害がありました。

発病抑止してくれる微生物を感じたことはまだないです。

自然栽培でやっていても

環境が悪ければ

病気は出ます。

これは暑さが原因かもしれませんが

青枯れ病がやっかいに思うことが増えてきました。

それが連作から来ているのかが見えづらいです。

そもそも自然栽培の連作障害回避は無施肥だけにあるのか

それともまわりに雑草がいることで

全くの単一作物のみではない状態が維持されて

連作になっていないことで障害が起きないのか

仕組みをはっきりさせたいところです。

とにかく暑すぎるのは環境が悪すぎて

今まで大丈夫だったことが大丈夫ではなくなります。

みどりの里では雑草防除のためにも

マルチや防草シートを使っていましたが、

極端な暑さで大丈夫だったマルチや防草シートが裏目るようになってます。

不自然にその植物のみが育っている環境を作っていることが

青枯れ病が出やすい環境を更に作っているかもしれません。

発病抑止の微生物はまだ感じないです。

青枯れ病の発病抑止の微生物や

他の植物の根の影響で抑止できたりすることがあるはずです。

例えこれらの微生物がいることがわかっても

現場でその力を引き出せなくては意味がないです。

また自然を知り実用化させていく方法を探して

極端な天候に対して有利に栽培を進めていけるようにこれからも情報収集していきたいです。

礒井先生にはいろいろお願いしてばかりですが、

その都度関係する情報を持ってきていただいて

すごく感謝しております。



2人目はみどりの里の安部雅之さんです。

自然栽培サトイモを作ってくれました。













石川早生のあぜを削ってしまって

その土が入った畝の生育が断トツいいです。



1条で植えても2条で植えてもさほど大きな生育の差が出ません。



度々この大きなイモムシをとりにいきました。



これも見つけてはとりました。

大発生しているわけではなかったです。







マルチャーが途中で壊れてしまって

トラクターで畝をたてたところは

畝が低かったので

4月の大雨のときに水没して種いもが腐ってしまいました。

その後出てきたサトイモも高いマルチャーでの畝より生育が劣ります。



こうして育っているときなら

畝間にずっと水がはってある状態でも大丈夫です。



暑すぎてそれでも脱水症状が出ます。





葉が折れたり破れたりしました。



9月は雨が多く

日照不足が続いたので

生育不良や病気が少し出ました。



サトイモが出始めていたので試しに掘ってみましたが、

まだ早いようです。

それでもイモがたくさんついていました。



芽が出てないイモで1.2キロでした。

まだ小さいですが、

サトイモがほしいと言われたので少し収穫して出しました。



種イモの上に親イモができて

そのまわりにどんどん子イモがつきます。

親イモを種イモに来年使うと

種イモが大きいものになり、

その上にこれと同じように親イモができると複数年やっている人に教えていただきました。

それじゃあ植えるときにけっこう深く掘って植えないと

親イモができるスペースが作れないですね。

連作についても会場の皆に聞いてみると

3名中3名が連作障害で収量が落ち続けているということはないです。

と答えてくれました。

来年は面積拡大のために場所は変える予定ですが、

その後同じ場所でも大丈夫そうです。

複数年自然栽培でやってみた人に聞いてみれることが

勉強会のいいところです。



3人目は秀明自然農法の大倉千鶴さんです。



9月は雨が続いてくれたおかげで

日照りで生育が悪かった夏野菜が一気に復活してくれました。



道法さんの縛る方法で作ったところ順調に収穫ができています。



ナスやトウガラシなど密植で株間30cmです。

1年に1作茎を残したまま越冬させ

春に抜いたところの間にまた植えてます。

なので不耕起栽培です。

縛って立ててあるので台風にも強かったです。





何でも縛って野菜を立たせて栽培中です。

次回は10月22日第4月曜日
18時半~20時
豊田市若草町2-6-8 「ほがらか」
にて開催します。

皆さんのご参加お待ちしております。  


Posted by みどりの里 at 14:25 │イベント

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2018年10月17日

自然栽培稲刈り



稲刈り10月8日から始まってます。



今年は泥を残す試み自体は悪くなかったと思うのですが、

とにかく暑さにやられました。

生育適温を大きく外れてしまうと

栽培うんぬんではなく

栽培の土台を崩されてしまうようなことなので

どうしようもなかったです。



見栄えがいいところもあって



草を抑えれたところもありました。

だから試みは悪くなかったのだろうと思ってます。



でも問題は穂です。

この籾の中に中身のない籾が混ざってます。



こんな感じで中を見ると空っぽです。

確実に減収します。

出穂時に高温をくらうと起きやすいです。

今年はお盆を過ぎた後もずっと猛暑が続いてしまい

お盆が過ぎたころに涼しくなってくるから

そこで出穂させ暑さをよける作戦を完全に崩されてしまいました。

過去に9月中旬収穫できる品種をやっていたときに

高温時の出穂で同じように空っぽになったことがあり、

自然栽培の稲は高温に弱いことが分かっていました。

お盆後の出穂にして克服したと思ったのに

地球温暖化が思ったより早く進んで環境を変えていってしまうので

せっかく打った手がすぐ無効にされてしまいます。



それが本当にひどく出た場所が猿投エリアでした。

砂地でもともと収量の上がりにくい場所ではあるのですが、



株張りはいいのに

全ての穂が垂れずに立ってしまいました。



中身が空っぽということです。

こんな状態は初めてです。

暑さのひどいところは出穂あたりで肥料をまいて

色が落ちてきたのを防いで暑さ対策をするそうです。

自然栽培は無肥料でやってしまうので

暑さでイネの消耗が激しくなっているところに

更に穂を出し花を咲かす養分が必要になり

養分が一時的に足りなくなって起きてしまうのだろうと思います。

暑さが激しければ激しいほど

養分の欠乏は起きやすく

空っぽになりやすくなります。

普通の夏ならこんなこと起きないで

養分も土中にある分で足りていました。

ここの地域は保肥力がかなり低い場所でもあるので

暑さの影響と自然栽培の弱点を完全につかれてしまったようです。

もうこの地域での稲作はやめます。

今まで一度起きた異常な暑さはこの先定着する傾向があります。

また同じような暑さが来たら

自然栽培では絶対に勝てないでしょう。

9月の出穂にずらして

10月終わり~11月に収穫する手もあるかもしれませんが、

この地域はそんなこと誰もしないので

全てのスズメがその田んぼに襲い掛かってきて

たぶん収穫までにお米が残らないでしょう。

適地適作を考えて

畑にしようかと考え中です。

自然に逆らうと手間ばかりかかって結果が出にくいです。

自然も変化していくので

それに合わせて自分も打つ手を変えていきます。



収穫には無門福祉会の障害者さんがいつも手伝ってくれます。



コンバインが入る前に大きくなっている草を除去してくれたり、

借り残した稲を刈ってくれます。

この作業に慣れてきてくれて

昨年より働いてくれている時間が長くなってきました。

一緒に稲刈りするのが楽しいと言ってくれてます。

役に立てるのがうれしいんだそうです。

私はただ必死にコンバインで刈ってて、

草が詰まったりしてトラブルが起きたら必死で対処して

を繰り返しているだけなんですけど、

その必死さが伝わるのか

私が何も言わなくても

今年はコンバインに入る前に草が目立つ箇所があれば

そこに入って草を取り除いてくれます。



職員の小谷野さんも昨年からこの作業に定着してつつあり

力を伸ばしてきてくれています。

皆が非常に助かる存在にどんどんなっていってくれてます。

みどりの里の田んぼが終わったら

無門さんの田んぼを収穫します。

収穫作業をうちからは米に関する機械と私が出て

無門さんからは障害者さんチームとトラックが出て協力します。

昨年は無理やり感がある協力体制だったけど

今年は自然な感じの協力体制になってます。

心の面でも農福共同体構想は進んでいる気がします。



よく晴れた心地よい日でした。

あぜに座ってちょっと休憩している障害者さんたちも

働くことの心地よさを感じてくれているようです。


  


Posted by みどりの里 at 07:30 │お米

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2018年10月16日

自然栽培サツマイモ堀り



自然栽培でサツマイモは手堅いです。

サツマイモは窒素固定ができるので

豆科と同じで窒素が足りないということがまず起きません。

でもたくさん作ろうとすると

収穫作業が大変です。

ツル切って外に出して、マルチはがして、イモ掘って、運びます。



つるを切り始めてますが、

昨年の場所だけでも大変だったけど



今年はここも増やしてあります。

ここは他の野菜だと自然栽培で挑むにはちょっと砂が強すぎて難しくて

結局サツマイモにしたら生育がとても良かったです。

適地適作ですね。



ストレートアライブさん、無門福祉会さんをいつもより大勢呼んで

サツマイモ堀り開始です。

いつもはつる切りやマルチはがしはストレートアライブさんに前日にお願いして

無門福祉会さんたちとサツマイモを掘るのですが、

今年は面積も多いので同時進行でやれる人がやれる作業を進める形にしました。



皆この作業は特に楽しんでやってくれます。



40人超えてたと思います。

一見イベントのようですが、

雨の前にどこまで掘れるかをやっているので

けっこういい緊張感で仕事を進めていました。



誰が一番でかいサツマイモを掘るかも秘かに行われていました。



サツマイモがどんどん掘れてこれを運び出すのですが、

コンテナに入れるとけっこう重いです。

でも障害者さんたちが一気に運び出してくれるので

あっという間に畑からサツマイモがなくなります。



足が悪い人たちは運び込まれたサツマイモのつる切りをしてくれました。

コンテナの数が足りなくなりそうだったので

余計なものを出してイモだけにしてくれたので

コンテナはぎりぎり足りました。



2日で昨年は下の畑だけだったけど

今年はそれプラス上の畑の3分の2まで収穫が完了しました。

次の日雨が少し降りましたが

みどりの里メンバーだけで残り10畝分を収穫しました。

このとき本当に障害者さんたちの力のありがたさが身にしみました。

サツマイモ堀りは機械を使っていても大変です。

今年は例年よりぼんやりしている障害者さんが少なくなってきていたように思います。

個別でみると仕事が進んでいるのかどうかよくわからんなと思ってしまうのですが、

そんな人たちが数で勝負してくると

重労働のはずの作業が楽しみながらなんなくさくっと終わってます。

不思議な光景です。

私たちはイチゴやイネや野菜を作っているので

サツマイモをたくさん作っても3日以内で収穫を完了させないと

他の作業ができなくなります。

これは農福連携じゃないととてもできない作業だと思います。

来年はこれを強みにサツマイモ以外でもこのパターンを増やすつもりです。

今年皆の動きをみて

農作業に慣れてきている感じがしました。

自然栽培の量産を農福連携でやり遂げたいです。
  


Posted by みどりの里 at 07:45 │野菜

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2018年10月15日

自然栽培イチゴの定植後



9月11日、平谷村に上げて暑さを2か月ほどさけていた

イチゴの苗ですが、

だいぶ疲れています。



標高900mの涼しいはずの場所が

今年は33℃くらいが普通に出てたし、

暑かったのでイチゴも避暑地になってなかったです。



今年はいつまでも暑かったので

いつもより1週間定植を遅らせました。

12日から定植しました。

写真が用意できなかったけど

障害者さんたちはここでも大活躍でした。



定植して雨や曇りが続くので

やっぱり今年も秋雨長そうだなと思って覚悟してました。

対策としては昨年までポットの土に5%混ぜていた

イネの育苗用に作った土(菌を増やした土)を今年はゼロにして

山砂と籾殻燻炭のみにしました。

これで2か月ポットのままで過ごせるのかと心配でしたが、

そんな土でも苗たちは新しい葉を出してきていました。

養分が多ければ多いほど雨に弱くなります。

養分が少なければ少ないほど水が多く必要になります。

今年は雨対策として最大限後者を選んであります。



台風とか大雨とか途中の30℃以上の暑さだったりと

病気が動くときもありましたが、



9月26日、定植から約2週間後



新しいきれいな葉を出してくれていました。



ここ3年くらいは秋が晴れ渡ることが少なくなってきて

日が足りない状態が続きます。

そうするとイモムシの発生が多くなり

イチゴも食われやすくなります。

障害者さんたちが半日に半棟ずつ虫取りをしてくれています。

午前にオクラを収穫して

午後は畑仕事かこうしたイチゴ管理に入りますので

皆立派な自然栽培者です。



10月13日のイチゴです。

葉かきが一度してあります。

定植から1か月がたちました。

この1か月雨や曇りが多かったけど

間に少し晴れてくれていたので少し助かってます。

それでもポット土に砂と燻炭だけにしたのはここまでのところ正解のようでした。



別に5%育苗土を混ぜても

ヨトウムシ、うどんこ病に対して防げる段階まで少ない状態です。

昨年イチゴも自然栽培らしさが存分に出ていましたので

秋が晴れの多い状態なら5%混ぜておいても問題ないと思います。

でも昨年はこの長い秋雨や台風にすっかりやられましたので

育苗時に危ないけどゼロでいくしか手がなかったです。

でもこれからはこういう曇りや雨や台風の多い秋を想定してないと作れないです。



ここは苗が足りなくて本当にひどい苗を植えた場所ですが、

ここも雨の中よくなった苗がいました。

これからは気温もどんどん下がって

曇りや雨が多いと畑が乾かなくなるので

病気が再発しそうで怖いところですが、

今年の試みがうまくいくことを願うばかりです。




  


Posted by みどりの里 at 10:06 │いちご

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